マイントピア別子(愛媛県)

 愛媛県新居浜市に位置するマイントピア別子は、かつて日本の産業を支えた別子銅山の跡地を活用した施設で、自然と産業遺産の両方を楽しめる場所として多くの人々を惹きつけています。ここでは、山あいの風景の中にひっそりと残るかつての坑道や機械設備が整備され、当時の様子を肌で感じることができます。特に「観光坑道」と呼ばれるエリアでは、トロッコ列車に乗って地下へと進み、重機が並ぶ空間や人形を使った採鉱の再現を目にすることができ、まるでタイムスリップしたかのような感覚を味わえます。
 敷地内には「鉱山鉄道」が走っており、レトロな列車での移動は子どもから大人まで楽しめます。駅舎も趣があり、写真撮影の人気スポットとなっています。また、敷地の中央には温泉施設「別子温泉~天空の湯~」があり、露天風呂からは山々の稜線が広がり、日々の喧騒を忘れてゆったりとくつろぐことができます。鉄分を多く含んだ赤褐色の湯が特徴的で、体の芯から温まると評判です。
 施設内には地元の特産品を扱うショップや、郷土料理が楽しめるレストランもあり、特に新居浜市周辺で採れる山菜や魚介を使った定食は旅の楽しみのひとつです。また、子どもたちが夢中になる「砂金採り体験」も行われており、小さな金の粒を見つけるたびに歓声があがります。
 秋には周囲の山々が赤や黄色に色づき、紅葉を楽しみながら散策できる遊歩道も整備されています。施設の奥にある「東平(とうなる)ゾーン」は標高750メートルほどの山腹に広がり、かつての鉱山住宅や鉱石運搬用の索道基地の遺構が残されています。ここから眺める瀬戸内海と四国山地の風景は格別で、訪れる人の心を静かに打ちます。
 新居浜市のマイントピア別子は、自然の美しさと人々の営みが重なり合う特別な場所として、多くの旅人に忘れがたい印象を与えています。時間をかけて巡ることで、この地が歩んできた長い物語をより深く感じることができるでしょう。

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