二十四の瞳映画村(香川県)

 香川県小豆郡小豆島町にある二十四の瞳映画村は、昭和初期の懐かしい情景がそのままに広がる場所で、訪れる人々をまるで時代をさかのぼったかのような気分にさせてくれます。ここは、壺井栄の名作小説『二十四の瞳』を原作とする映画のロケ地として整備された場所で、かつての撮影に使用された木造校舎や漁村の家々が丁寧に再現され、当時の雰囲気を色濃く残しています。
 波の音が心地よく響く岬の入り江に位置し、潮風に吹かれながら散策するだけでも心が和みます。校舎の中では、机や椅子、黒板などがそのまま残されており、まるで物語の世界に入り込んだような気分を味わうことができます。子どもたちの笑い声が聞こえてきそうな教室には、来訪者の記憶の中にある懐かしい風景が広がっています。
 村内には映画のシーンを再現した展示や、当時の衣装、ポスターなどが飾られた資料館もあり、歩いていると自然と物語の情景が浮かんできます。また、建物の外観だけでなく、路地や井戸、小さな橋といった細かな部分にも昭和の風情が息づいており、どこを見ても丁寧なつくりに目を奪われます。
 さらに、地元の食材を使った昔ながらの給食風メニューが味わえる食堂もあり、童心に返ったような気分で食事を楽しむことができます。小豆島町の特産である佃煮やオリーブ製品なども販売されており、旅の思い出として手に取る方も多く見られます。訪れる季節によっては、周囲の海や山々の景色も美しく変化し、春は桜、夏は青空と入道雲、秋は紅葉、冬は静かな凛とした空気が漂います。
 小豆島町の穏やかな自然の中で、昭和の時代に触れ、物語の温もりに包まれるひとときを過ごすことができる場所として、多くの人々に親しまれています。日々の喧騒を離れて、静かに流れる時間の中で、自分自身の記憶や感情と向き合えるような、そんな豊かな時間がここにはあります。