女木島 鬼ヶ島大洞窟(香川県)

 香川県高松市に属する女木島は、瀬戸内海に浮かぶ穏やかな島で、港からバスや徒歩で向かえる山の中腹に「鬼ヶ島大洞窟」があります。島全体が古くから伝説と結びついており、特にこの洞窟は、あの有名な桃太郎のおとぎ話に登場する鬼たちの住処とされてきました。標高188メートルの鷲ヶ峰に掘られたこの巨大な岩窟は、自然の地形を巧みに利用しながら手が加えられたもので、内部は迷路のように入り組み、初めて訪れる方はまるで物語の中に足を踏み入れたかのような感覚になります。
 洞窟内には、岩肌をくり抜いたような広間や狭い通路がいくつもあり、その途中には鬼の像が点在しています。それぞれの像は異なる表情をしており、見る人の想像力をかき立てる工夫がなされています。また、岩の裂け目からわずかに差し込む光と、ところどころに設けられた照明がつくり出す陰影が、独特の雰囲気を演出しています。小さな子ども連れの方から年配の方まで、訪れる誰もが童心に帰り、冒険するような気持ちで歩を進めています。
 この場所に立つと、瀬戸内の静かな風景と対照的に、かつてこの島に何か特別な力が宿っていたのではないかと感じさせられます。洞窟の入口付近からは海が見渡せ、晴れた日には遠く本州の山並みまでも望むことができます。天気が良ければ海風が心地よく、洞窟を出た後の余韻もまた格別です。高松港から女木島まではフェリーで20分ほどとアクセスも良好で、日帰りでも十分に楽しめます。
 女木島は「鬼ヶ島」という愛称でも知られていますが、この洞窟を訪れることで、その由来にふれることができます。静かな島の自然の中にひっそりと佇むこの場所は、訪れる人に非日常の体験を与えてくれる貴重な空間となっています。高松市を訪れた際には、ぜひこの鬼ヶ島大洞窟にも足を運んでみてください。物語と現実が交差する、忘れがたい時間が過ごせることでしょう。

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