山口県の南東部に位置する周防大島町には、干潮の時間にだけ海の中から姿を現す小さな島、真宮島があります。普段は瀬戸内海の波に包まれ、遠くからはその存在すら感じられないほどですが、潮が引くと周囲を取り巻く砂州が海の中から浮かび上がり、本土と島とを結ぶ一本の道のようになります。この自然が生み出す海の道は「エンジェルロード」と呼ばれ、地元の人々や訪れる人々にとって特別な風景として親しまれてきました。
真宮島へは、周防大島町の陸奥地区から歩いて渡ることができ、干潮時には静かな海面の向こうにぽつんと佇む島へと誘われるように道が続いていきます。足元には小石や貝殻が散りばめられ、時折、波が柔らかく打ち寄せる音が聞こえてきます。この道を歩く時間そのものが、日常から離れて心を解き放つ体験となるでしょう。島にたどり着くと、そこには神秘的な雰囲気が漂い、樹々の間を抜ける潮風が涼やかに頬を撫でてくれます。
無人島でありながらも、どこか人のぬくもりを感じさせるような静けさが漂い、足を止めて深呼吸をすれば、自然とともにあることの心地よさに包まれます。また、この一帯から望む夕暮れの光景は格別で、茜色に染まる空と海が織りなす風景は、写真では決して伝えきれない美しさがあります。
周防大島町は「瀬戸内のハワイ」とも呼ばれる温暖な気候と穏やかな海に囲まれた地域ですが、その中でも真宮島はひときわ印象深い場所のひとつです。訪れる際は潮の時間を確認する必要がありますが、そのタイミングを見計らって歩くこの体験は、自然のリズムと自分の感性がぴたりと重なる瞬間を味わうことができるはずです。ゆっくりと歩みを進めながら、周防大島町の海と空と時間の流れに身をゆだねてみてはいかがでしょうか。
真宮島(山口県)

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