御手洗町並み保存地区（広島県）

　広島県呉市豊町御手洗は、瀬戸内海に面した風情ある港町で、江戸時代から昭和初期にかけての建物や町の雰囲気が色濃く残されています。この地域は江戸時代に北前船の寄港地として栄え、多くの商人や旅人で賑わいを見せていました。現在もその面影を随所に見ることができ、通りを歩けば、白壁の土蔵や格子窓の町家が並び、まるで過去の時間の中に迷い込んだような気持ちになります。
　町の中心には、廻船問屋や古い商家が建ち並び、中には一般公開されている建物もあります。かつての繁栄を支えた酒蔵や茶屋跡も残されており、それぞれにまつわる物語が訪れる人々の想像をかき立てます。また、道幅の狭い通りには石畳が敷かれ、通り沿いの軒下には昔ながらの看板や格子戸が見られ、どこか懐かしさを覚えるような光景が続きます。
　御手洗には、文人墨客や芸妓たちが集った場所もあり、文化と芸能が花開いた様子が今でも伝わってきます。中でも高燈籠と呼ばれる灯台は、海からの目印として町を見守り続けており、潮風に揺れるその姿がこの港町の象徴とも言える存在です。近くの海岸に出ると、穏やかな海と島々が織りなす瀬戸内らしい景色が広がり、心を静かにしてくれるような時間が流れます。
　また、御手洗の町並みは映画やドラマの撮影地としても知られており、どこを切り取っても絵になるような風景が魅力です。観光案内所では散策マップが配られており、町歩きの手助けにもなります。季節ごとに催しも行われており、町の人々と訪問者との交流が生まれる機会も多く見受けられます。
　呉市豊町御手洗は、訪れる人々に昔ながらの日本の町並みと人々の暮らしの息づかいを感じさせてくれる場所です。現代の喧騒から離れ、静かに流れる時間の中で、心豊かな旅のひとときを過ごしていただけることでしょう。