三重県志摩市に位置する賢島は、英虞湾(あごわん)に浮かぶ美しい島で、リアス式海岸の穏やかな海に囲まれた風光明媚な場所です。その賢島を拠点に運航している「エスパーニャクルーズ」は、スペインのガレオン船を模した豪華な遊覧船で、志摩の自然と文化を体感できるユニークな船旅を楽しむことができます。
このクルーズの始まりには、志摩地域とスペインとの関係が関わっています。かつて16世紀末、日本とヨーロッパとの交流が始まった時代、伊勢志摩の海は南蛮貿易の一端を担っており、遠くスペインやポルトガルの文化が流れ込んできました。その流れを現代に伝える形で、賢島のエスパーニャクルーズは、異国情緒と日本の伝統が交差する志摩市ならではの体験を提供しています。船は「エスぺランサ」と名付けられ、スペイン語で「希望」を意味します。船内には西洋風の装飾が施され、まるで大航海時代にタイムスリップしたような気分になります。
クルーズは約50分ほどで、英虞湾の多島美を存分に堪能できます。湾内には大小さまざまな島々が浮かび、なだらかな山並みと入り組んだ海岸線が織りなす景色は、季節や時間帯によって異なる表情を見せます。また、この地域は真珠養殖の発祥の地としても知られており、船上からは海面に浮かぶ真珠筏(いかだ)を見ることができます。実際に真珠の核入れ作業が行われている様子を間近で見学できる場面もあり、志摩市の産業と海とのつながりを身近に感じることができます。
さらに、船から眺める夕暮れ時の英虞湾は格別で、空と海が茜色に染まり、静かな波にきらめく光が旅人の心を優しく包み込みます。賢島駅から乗り場までは徒歩で数分とアクセスも良く、観光の合間に気軽に立ち寄れる点も魅力です。志摩市ならではの自然美と歴史を、船上という特別な空間で感じるこのクルーズは、訪れる人々に深い印象を残すでしょう。
賢島エスパーニャクルーズ(三重県)

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