愛知県津島市にある天王川公園は、豊かな自然と歴史が息づく風情ある場所として、多くの観光客に親しまれています。この公園の名の由来となっている天王川は、かつて木曽川の支流である佐屋川に合流しながら、江戸時代までは津島のまちの中央を悠々と流れていました。その流れは町の生活や交通に密接に関わり、津島神社の門前町として栄えた津島の発展を支える重要な存在でした。しかし時代の移り変わりとともに川の流れは変わり、現在では市の西部にあるこの天王川公園の中に、往時の名残として「丸池」という形でその姿をとどめています。
丸池を中心に整備された園内には、かつての水辺の風景を思わせるような静かな雰囲気が広がっており、訪れる人々に心落ち着く時間を提供してくれます。春になると、この池の周囲を囲むように長大な藤棚が設けられており、その下に咲く藤の花々が見事な景観をつくり出します。紫や白の花が滝のように垂れ下がり、水面に映る様子はまさに絵画のような美しさです。藤の開花にあわせて開催される「藤まつり」では、夜間のライトアップも行われ、昼とは異なる幻想的な光景を楽しむことができます。
また、園内は藤の季節に限らず、四季折々の彩りが楽しめる場所として親しまれています。春の桜、夏の緑陰、秋の紅葉、冬の静寂と、季節ごとに異なる表情を見せ、何度訪れても新たな魅力に出会うことができます。池のほとりには遊歩道が整備されており、散策をしながらかつての天王川の流れに思いを馳せることができるのも、この公園ならではの楽しみです。
津島市に残されたこの公園は、ただの自然景観だけでなく、まちの歴史や人々の暮らしの記憶を今に伝える場所でもあります。かつて川が流れていたことを知りながら歩くことで、現在の景観に重なる過去の風景が浮かび上がり、より深い感動を味わうことができるでしょう。
天王川公園(愛知県)

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