モザイクタイルミュージアム(岐阜県)

 岐阜県多治見市に位置するモザイクタイルミュージアムは、タイルの魅力を五感で楽しめるユニークな施設です。この地域は古くから美濃焼の産地として知られ、陶磁器の文化が深く根づいていますが、その中でもモザイクタイルの製造は20世紀初頭から盛んになり、全国へと広がっていきました。特に昭和初期には、台所や浴室を彩る装飾として家庭に普及し、建築と生活の双方に密接な関わりを持つ存在となりました。多治見市笠原町は、そうしたモザイクタイル産業の中心地として発展してきた歴史を持ちます。
 この施設の建物は、まるで土の中から突き出た丘のような、不思議でやわらかな曲線を描く外観が印象的で、建築家・藤森照信氏によって設計されました。入り口へと向かうまでのアプローチも、まるで地層をたどるかのような体験ができ、訪れる人の好奇心をくすぐります。館内に入ると、まず目に飛び込んでくるのは色とりどりの小さなタイルが織りなす空間で、まさに視覚の万華鏡ともいえる光景が広がっています。
 館内では、昔使われていた洗面台や浴槽、看板など、時代ごとのタイル製品が実際に展示されており、それぞれの時代の暮らしや美意識を肌で感じることができます。また、タイルの製造工程を紹介する展示では、素材の選定から釉薬の塗布、焼成にいたるまでの職人の技が丁寧に紹介されており、ものづくりの精神を感じ取ることができます。さらには、自分だけのオリジナル作品を作れるワークショップも開催されており、観るだけでなく実際にタイルに触れ、創作する喜びを味わうことができます。
 タイルというと、普段は壁や床の一部として何気なく見過ごしてしまいがちですが、このミュージアムを訪れると、それらがいかに豊かな表情を持ち、生活の中に美をもたらしているかに気づかされます。多治見市笠原町のこの場所では、単なる建材としての役割を超え、アートとしてのタイルの世界が広がっています。訪れるたびに新たな発見があり、大人から子どもまで楽しめる魅力が詰まった施設です。

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