山梨県大月市に位置する猿橋は、全国に名高い「日本三奇橋」のひとつとして知られています。この橋は、桂川の渓谷にかかっており、まるで空中に浮かんでいるかのような独特な構造が人々の目を引きつけます。通常の橋とは異なり、橋脚を持たない構造で、両岸から張り出した木材を互いに支え合うように組み上げた「刎ね木(はねぎ)」工法によって造られています。この工法は古くから伝わるもので、険しい地形や水流の激しい場所でも橋を架けることができる知恵の結晶とも言えます。
このような構造が採用された理由には、かつての桂川の流れが非常に急であり、橋脚を立てると水の勢いによって損壊しやすかったという事情がありました。現在の猿橋は江戸時代後期の設計をもとに復元されたもので、昔ながらの技術と現代の補強を融合させた姿を見ることができます。木組みの繊細な意匠や、全体に施された白壁風の装飾も美しく、訪れた人々はその造形美に感嘆します。
猿橋の周囲には自然も豊かに広がっており、春には桜が咲き誇り、秋には紅葉が谷を彩ります。桂川の澄んだ流れと相まって、四季折々に異なる表情を見せる風景は、多くの写真愛好家や観光客を魅了しています。
また、大月市内には周囲の自然と歴史を楽しめる散策コースも整備されており、猿橋を起点にのんびりと歩いて回るのもおすすめです。地元の人々の手によって丁寧に保存されてきたこの場所は、日本の伝統と技術、そして自然の美しさが見事に調和した空間となっています。訪れるたびに新たな発見がある猿橋は、大月市を訪れる際にはぜひ立ち寄っていただきたい名所のひとつです。
猿橋(山梨県)

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