九十九湾(石川県)

 石川県鳳珠郡能登町に位置する九十九湾は、能登半島の北東部に広がる静かな入り江で、日本海の荒波とは対照的に穏やかな風景が広がる場所です。入り組んだ海岸線が美しく、まるで無数の小さな湾が連なっているかのように見えることから、「九十九」の名がつけられたといわれています。実際には数え切れないほどの入り江が存在し、それぞれが独特の形をしているため、海岸線の美しさを堪能するには絶好の場所となっています。
 この湾は、リアス式海岸の典型としても知られており、透明度の高い海と奇岩、さらには緑豊かな山々が織りなす風景が訪れる人々を魅了します。特に、九十九湾周辺では昔から漁業が盛んで、豊かな海の恵みを活かした暮らしが営まれてきました。漁師たちは、この複雑な地形を利用して季節ごとにさまざまな魚介類を獲っており、海とともにある生活の様子は、今も地域の文化に色濃く残っています。
 また、能登町は「能登半島国定公園」の一部でもあり、九十九湾もその中に含まれています。環境保全の観点からも重要視されており、自然の姿ができる限りそのまま保たれています。「のと海洋ふれあいセンター」は、九十九湾の自然や海洋生物を体験できる場所です。展示室では海の生き物を学び、タッチプールで直接触れることができます。観察路やスノーケリング体験で海中を探索でき、貝殻クラフトや塩づくりなどの体験プログラムも豊富です。海の魅力を五感で感じることができる点が特徴で、子どもから大人まで楽しめるスポットです。
 さらに、周辺には遊覧船も運航しており、海上から九十九湾の複雑な地形を眺めることができます。船から見る湾内の風景は、陸上とはまた違った趣があり、海と陸とが織りなす自然の造形美を堪能することができます。季節によっては、朝靄がかかる幻想的な風景や、夕日に照らされた岩肌が美しく染まる瞬間に出会えることもあります。
 このように、石川県能登町にある九十九湾は、自然と人の営みが調和した場所として、多くの人々に愛されてきました。訪れるたびに新たな表情を見せてくれるこの湾は、静かに過ごしたい旅行者にも、自然を間近に感じたい方にもおすすめできる場所です。

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