能登金剛・巌門(石川県)

 石川県羽咋郡志賀町に位置する能登金剛・巌門(がんもん)は、能登半島の日本海側に広がる断崖絶壁の海岸線が続く景勝地で、訪れる人々を圧倒するような自然の造形美を楽しむことができます。この一帯は、長い年月をかけて海の荒波が岩肌を削り続けた結果、奇岩や洞門が多数形成され、なかでも巌門と呼ばれる巨大な岩のアーチは特に有名です。この天然の門のような岩のトンネルは、約15メートルの高さと6メートルの幅をもち、海上からも陸上からもその雄大な姿を間近に見ることができます。
 巌門周辺には、かつて加賀藩前田家の家臣がこの海岸を巡回していたという記録が残されており、人の手がほとんど入っていない自然の風景を守りながらも、地域の文化や暮らしと密接に関わってきたことがうかがえます。また、能登金剛という名称は、北朝鮮の金剛山にその景観が似ていることに由来しており、古くから詩や絵画の題材としても親しまれてきました。
 この地域では、遊覧船に乗って海上からダイナミックな岩の造形を眺めることができ、特に夕暮れ時には赤く染まる空と海のコントラストが美しく、多くの写真愛好家や観光客を魅了しています。さらに、周辺の遊歩道を歩くと、岩場の上から日本海を一望でき、風の音と波の音が混ざり合うなかで、自然と一体になるような静けさを味わえます。春から秋にかけては、海岸線に咲く季節の花々や野鳥の姿も見られ、訪れるたびに違った表情を見せてくれます。
 志賀町を訪れる際には、この海と岩が織りなす壮大な風景をじっくりと体感していただき、能登半島の自然と人の暮らしがどのように調和してきたのかを感じてもらえることでしょう。地元の人々もこの場所に誇りを持ち、訪れる人々に温かく接してくれるため、旅の思い出に深く残るひとときとなるはずです。

コメント