松川遊覧船/松川べりの桜(富山県)

 富山県富山市の中心部を流れる松川は、かつて「神通川(じんづうがわ)」と呼ばれていた大河の名残です。かつて神通川は氾濫を繰り返す暴れ川として知られていましたが、昭和初期の治水工事により流路が変更され、旧河道は都市の中を静かに流れる現在の松川として生まれ変わりました。こうして市民の生活により近い存在となった松川は、次第に憩いの場所として整備されていき、今日では富山市を象徴する風景のひとつになっています。
 その松川をゆったりと進む松川遊覧船は、春から秋にかけて運航され、季節ごとの風景を水上から楽しむことができます。とりわけ春の桜の季節には、川の両岸に咲き誇るソメイヨシノやシダレザクラが川面を覆うように枝を伸ばし、まるで桜のトンネルの中を進むような幻想的な時間を味わえます。およそ500本とも言われる桜が一斉に咲き誇る光景は壮観で、昼間はもちろん、ライトアップされた夜桜もまた異なる趣を持ち、多くの訪れる人々を魅了しています。
 松川沿いには遊歩道が整備されており、川辺を散策する人々で春は特ににぎわいます。ベンチに腰を下ろしてゆっくりと桜を眺めたり、写真を撮ったりする人々の姿が多く見られ、地元の方々はもちろん、県外からの観光客にも人気のスポットとなっています。近くには富山城址公園や富山市郷土博物館などもあり、川沿いの散策とともに、周辺の施設を訪ねるのもおすすめです。
 また、松川遊覧船の船頭による案内もこの体験の大きな魅力のひとつです。土地の歴史や川の成り立ち、周辺の建物について語ってくれるため、ただの観光にとどまらず、地域についての理解も深まる貴重な時間となります。川の流れに身を任せながら、富山市の中心でゆったりとした時間を過ごすこの体験は、富山の旅に一層の彩りを加えてくれることでしょう。

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