神奈川県の足柄下郡箱根町にある箱根旧街道杉並木は、江戸時代に整備された東海道の一部で、今も当時の面影を残す貴重な場所です。この道は、徳川幕府によって江戸と京都を結ぶ幹線道路として整備され、多くの旅人が往来しました。特に箱根は急峻な山岳地帯に位置しており、旅の難所として知られていましたが、その中でも箱根旧街道は重要な通行ルートのひとつとして利用されていました。
道の両脇にそびえる杉の木々は、17世紀初頭に植えられたもので、旅人を夏の日差しや風雨から守るための工夫として整備されたといわれています。現在でもその杉が立ち並ぶ姿は圧巻で、樹齢300年以上の巨木が何百本も続いている様子は、まるで時間が止まったかのような静寂と荘厳さを感じさせてくれます。訪れる人々は、足元に広がる丸石敷きの旧道を踏みしめながら、江戸の旅人たちの足跡を追体験することができます。
この道を歩くことで、当時の交通や暮らしの一端に触れることができるのも魅力のひとつです。周囲には苔むした石垣や地蔵、また道沿いには茶屋跡なども点在しており、往時のにぎわいを偲ぶことができます。さらに、箱根町が現在でもこの道を丁寧に整備し、自然と歴史が調和した景観を守っていることも印象的です。
杉並木の区間は、箱根関所跡から甘酒茶屋周辺まで続いており、途中には芦ノ湖の美しい景色を望む場所もあります。四季折々の自然の変化とともに、この道を歩くことは、まるで過去と現在を結ぶ静かな旅のように感じられます。静けさと自然の中に息づく歴史の重みを味わいながら、心落ち着く時間を過ごすことができるでしょう。箱根町を訪れた際には、ぜひこの道を歩いてみてください。
箱根旧街道杉並木(神奈川県)

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