埼玉県越生町にある上谷の大クスは、訪れる人々を圧倒するほどの存在感を持つ巨大なクスノキです。この木は、町の北部に位置する静かな山あいの里山に根を下ろしており、その堂々たる姿は何百年もの時を超えて今もなお生き続けています。推定樹齢はおよそ千年以上ともいわれ、まるでこの地の移り変わりを黙して見守ってきたかのような佇まいです。その太くうねる幹や、大きく広がった枝葉は、長い歳月の中で育まれてきた自然の力強さと神秘を感じさせてくれます。
このクスノキは、昔から地域の人々にとって特別な存在でした。木の根元には小さな祠がまつられており、地元では神木として敬われてきました。人々はこの木に手を合わせ、五穀豊穣や家内安全を祈ったといいます。越生町自体が古くから梅の里として知られていますが、この大クスもまた町の自然と信仰の一端を担う大切な存在です。
春になると、周囲の木々と共にやわらかな緑が芽吹き、夏には濃い葉が空を覆うように茂ります。秋には足元の落葉が絨毯のように地面を包み、冬になるとその力強い幹がより一層際立って見えます。季節によって姿を変えるその様子は、訪れるたびに新たな感動を与えてくれることでしょう。また、木のすぐそばまで歩いて近づくことができるため、その圧倒的なスケールを間近に感じることができます。
アクセスはやや不便ではありますが、越生駅からバスや車で山道を進んでいくと、ひっそりとたたずむこの大樹に出会えます。都会の喧騒から離れた場所にありながら、足を運ぶ価値のある力強い存在です。自然の尊さや、時の流れの重みを肌で感じることができるこの場所は、越生町を訪れるならぜひ立ち寄ってほしい名所のひとつです。
上谷の大クス(埼玉県)

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