キモノフォレスト(京都府)

 京都府亀岡市に隣接する京都市右京区の嵐山エリアには、訪れる人々を幻想的な光の世界へと誘う「キモノフォレスト」と呼ばれる美しい空間があります。京福電気鉄道嵐山本線、通称「嵐電」の嵐山駅に隣接するこのスポットは、京友禅の鮮やかな模様をあしらった約600本のポールが林立し、その名の通り森のような景観を生み出しています。
 この場所は、駅のリニューアルに伴い、伝統と現代の美が調和する空間として整備されました。ポールの中にはアクリルで保護された京友禅が収められており、昼間は自然光の下でその繊細な色合いや柄を楽しむことができます。夜になると、ポールの内部に仕込まれたLEDが点灯し、幻想的な光景が広がります。暖かみのある光が友禅の模様を浮かび上がらせ、昼間とは異なる趣を感じられるのが魅力です。
 デザインを手がけたのは、日本国内外で活躍するデザイナーの森田恭通氏です。京都の伝統工芸である京友禅を活かしながら、現代的な空間として再構築することで、観光客だけでなく地元の人々にとっても心地よい場所となっています。京友禅の生地は、老舗の染工房「亀田富染工場」が提供しており、伝統技術が息づく意匠の数々が訪れる人々を魅了します。
 また、このエリアには「龍の愛宕池」と呼ばれる小さな水辺も設けられています。古くから京都の人々に信仰されてきた愛宕山の名を冠したこの池には、「願いを込めると叶う」とされる石が沈められており、訪れた人々がそっと手を合わせる光景も見られます。キモノフォレストを訪れた際には、ぜひこの池にも立ち寄り、静かな時間を過ごしてみるのもよいでしょう。
 嵐電の嵐山駅周辺には、竹林の小径や渡月橋など、京都を代表する風景が広がっていますが、この場所もまた、京都の伝統と現代が融合する独特の魅力を放っています。日中の鮮やかな色彩と夜の幻想的な光、それぞれの時間帯で異なる表情を見せるこの空間は、訪れる人々に忘れがたい印象を残すことでしょう。

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